私たち、兄妹は踊り手です!
「お兄ちゃん!は、恥ずかし……」

「……このままで居させてよ……」

今にも消えていきそうな、壊れていきそうな声でお兄ちゃんは呟く。

「……うん。分かった」



『兄妹揃ってかっこいい!』

『白と黒の服で合わせてあるのが良い!!』

うつ病を克服中のお兄ちゃんと踊った『夜に駆ける』(先輩に振り付けを考えてもらった)を、お兄ちゃんは、俺も駆けれたら良いのに。という一言を添えて投稿した。

高校を卒業した私たちは、隠す必要が無くなって、私とお兄ちゃんは兄妹であることを明かしたんだ。

「……消えてしまいたいな」

お兄ちゃんは、小さな声で呟く。

「え?今、何て?」

気のせいかな、と思って聞き返すと、お兄ちゃんは「何でもないよ」と笑った。



私はお兄ちゃんに内緒で、『君が飛び降りるのなら』を踊って、それを投稿する。もうちょっとだけ一緒にいませんか!という一言を添えて。

そして、お兄ちゃんに言いたいことがあって、私はお兄ちゃんを見つめた。

「ずっと黙ってたけど……最近、お兄ちゃんの様子、おかしいよ?高い場所でぼんやりと下を見てるなって思ったら、『消えたい』って呟くし、こっそりと家を抜け出して、マンションの屋上まで行ってさ……飛び降りようとするし!心配だったんだから!」

言ってる途中に、涙が溢れ出す。それを見たお兄ちゃんは「……ごめんね」と言いながら、私を抱き締めた。
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