【BL】氷上の王子様
このまま玄関の前にいて家の中に入れてもらえるのを待つか、それとも自分で泊まる場所を探すか。
僕はスケートの練習で学校に行かない日もあるから、なかなか頼れる友達も居ない…。
とりあえず、今までにない緊急事態だ。お父さんに電話してみる。
タイミングよくつながった電話。
「おう、理玖。ちょうど仕事終わって、これから帰るところだよ。どうした?こんな時間に電話なんて珍しいな」
「うん……実はね、お母さんとちょっと、喧嘩というか……なんというかね…あー、なんて言ったらいいんだろう、」
僕は思わず、電話口で泣いてしまった。
ただ事ではないのを察したお父さんが、僕に落ち着くようにと声をかける。
「僕、スケート辞めようと思って。才能がないんだもん。だったら練習して補おうとした。けど、何度やっても無理なんだ。才能もない、努力しても無理。だったらもう…やってても無駄だよ……」
お父さんはひたすらに聴いてくれた。
「話はわかった。お前にも母さんにも悪気はない。ただ、お互いの想いが違うから、それがぶつかり合っただけだろ?とりあえず理玖、今日はホテルを取っておくよ。そこに泊まりなさい。一人で泊まることになるけど、いいね?」
お父さんは僕らに落ち着く時間を与えるために、あえてお母さんと僕を引き離すことにした。
僕も、泣かないで話せるくらいに冷静になる時間が必要だと思い、わかった、と返事した。
最寄りのバス停に荷物を持って座っていると、お父さんの車が見えた。
僕の前で止まり、車に乗り込む。
「やあやあ、理玖。お前も母さんと衝突できる歳になったんだな」
お父さんは少し上機嫌そう。
「どうして嬉しそうなんだよ?」
「だって、前はお前、お母さんに怒られるのが怖くて何も反抗できてなかったろ?自分がこうしたいっていう想いと、親のこうさせたいっていう想いがぶつかるってのは、これは成長の証だもの。いいことだと思うよ、お父さんは。お母さんはどうか、わかんないけどね?」
語尾がちょっといたずらっ子みたいに聞こえて、僕は笑う。
車はそこから10分ほど走り、ビジネスホテルの前で止まった。
「予約は取ってあるよ。手続きは、17歳だもの。一人でできるね?理玖」
「うん。大丈夫だと思う」
「何かわからなかったら、遠慮なく電話かけてこいよ。夜はちゃんと部屋で過ごすんだぞ。男の約束、な?」
「わかってるよ。一日だけ一人暮らしだ」
僕が笑って言うと、お父さんは少し安心したように「おう!」と笑って、ホテルの駐車場から車を出した……。
どんどん遠くなっていくお父さんの車に、なんだか涙が出できた。
でもこんどはその涙をグイッとぬぐって、僕はホテルに向かった。
僕はスケートの練習で学校に行かない日もあるから、なかなか頼れる友達も居ない…。
とりあえず、今までにない緊急事態だ。お父さんに電話してみる。
タイミングよくつながった電話。
「おう、理玖。ちょうど仕事終わって、これから帰るところだよ。どうした?こんな時間に電話なんて珍しいな」
「うん……実はね、お母さんとちょっと、喧嘩というか……なんというかね…あー、なんて言ったらいいんだろう、」
僕は思わず、電話口で泣いてしまった。
ただ事ではないのを察したお父さんが、僕に落ち着くようにと声をかける。
「僕、スケート辞めようと思って。才能がないんだもん。だったら練習して補おうとした。けど、何度やっても無理なんだ。才能もない、努力しても無理。だったらもう…やってても無駄だよ……」
お父さんはひたすらに聴いてくれた。
「話はわかった。お前にも母さんにも悪気はない。ただ、お互いの想いが違うから、それがぶつかり合っただけだろ?とりあえず理玖、今日はホテルを取っておくよ。そこに泊まりなさい。一人で泊まることになるけど、いいね?」
お父さんは僕らに落ち着く時間を与えるために、あえてお母さんと僕を引き離すことにした。
僕も、泣かないで話せるくらいに冷静になる時間が必要だと思い、わかった、と返事した。
最寄りのバス停に荷物を持って座っていると、お父さんの車が見えた。
僕の前で止まり、車に乗り込む。
「やあやあ、理玖。お前も母さんと衝突できる歳になったんだな」
お父さんは少し上機嫌そう。
「どうして嬉しそうなんだよ?」
「だって、前はお前、お母さんに怒られるのが怖くて何も反抗できてなかったろ?自分がこうしたいっていう想いと、親のこうさせたいっていう想いがぶつかるってのは、これは成長の証だもの。いいことだと思うよ、お父さんは。お母さんはどうか、わかんないけどね?」
語尾がちょっといたずらっ子みたいに聞こえて、僕は笑う。
車はそこから10分ほど走り、ビジネスホテルの前で止まった。
「予約は取ってあるよ。手続きは、17歳だもの。一人でできるね?理玖」
「うん。大丈夫だと思う」
「何かわからなかったら、遠慮なく電話かけてこいよ。夜はちゃんと部屋で過ごすんだぞ。男の約束、な?」
「わかってるよ。一日だけ一人暮らしだ」
僕が笑って言うと、お父さんは少し安心したように「おう!」と笑って、ホテルの駐車場から車を出した……。
どんどん遠くなっていくお父さんの車に、なんだか涙が出できた。
でもこんどはその涙をグイッとぬぐって、僕はホテルに向かった。