【BL】氷上の王子様
「だっ、大丈夫ですか!?」

あの男性が、部屋の中で倒れている。

入るか迷ったが、隣の部屋で殺人事件?なんてことになったら大変だもの!


部屋の中に入って、男性の体を少し揺すってみる。

医者でもない僕には、これが眠っているだけなのか、何か病気で倒れているのか、判別がつかない……。


フロントに電話しようと、子機に手を掛けた。

その手を、大きな手がおおった。

僕はとっさのことで、全く声が出せない…っ!
「かけなくて、いい」

ゾンビのように男性が覆いかぶさってきたからだ。


な、なにされるんだ…!?

そう思ったが、次の瞬間には、自分の手に置かれた大きな手も力を失い、男性は僕にもたれかかるようにまた眠ってしまった…。


「よかった……寝てただけか」


僕も眠かったが、なんとか男性をベッドまで運んだ。

かけていたメガネを外してやって、自分の部屋に戻ろうとして、ふと思い出す。


「やばっ……自分の部屋の鍵、持ってきてないじゃん…!」


生憎、このビジネスホテルはオートロック。

このままこの男性の部屋から出たら、僕はもう寝る場所はない。


だからと言って、この部屋に入ったままではいけない。

苦肉の策で、せめて持ってきたケータイのアラームを朝5時に設定して。


「絶対、絶対5時には起きる。何があろうとも……」


呪文のように言いながら、僕は男性のベッドの中に密かに潜り込んで、眠った……。
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