二度目の初恋
休み時間の後の掃除の時間はオレ、ゆいぼん、伽耶、たかれな、ひろの5人で班を組まされ、1ヶ月ごとにローテーションされる掃除場所を協力して掃除していた。

と言いたいところだが、実際には掃除というより、休み時間の延長みたいな時間を過ごしていた。


「今日は雑巾がけレースやろうよ!」


言い出しっぺはいつもゆいぼん。

しかし、聞いているのはオレだけ。

伽耶は黙々とほうきで掃いてゴミと格闘し、たかれなとひろはまた別のことでケンカしていた。


「よ~し、じゃあ悠永くんと私でやろう」

「いや、オレはいい」

「何それぇ。つまんないのぉ。さては、わたしに負けるのが怖いんだなぁ?」


ゆいぼんの悪い癖だ。

オレにイエスと言わせるために挑発してくる。

オレは性格上それをスルー出来ない。


「そんなことない」

「じゃあやるんだね?」

「うん...やる」

「よぉし、ではではスタートラインに着きましょ~」


ゆいぼんに言われるがままオレは教室の前ドアの横にスタンバイした。

ゆいぼんはスカートだと言うのに構わずお尻を上げる。

あと2年後だったら鼻血を出していただろう。

幼くて無知なのはある意味いいことだ。


「準備はいい?」

「オーケー」

「それでは参ります。レディ、セットぉ、ゴー!」


なぜ英語だったのかオレには全く分からなかったが、とにかく歯を食いしばって必死
に手と足を動かした。

ゆいぼんに誘われ、休み時間にサッカーをするようになったせいか足が速くなり、動きも機敏になったように思えた。

生ぬるい風が廊下の窓から吹いてくる中、ぴったり隣を駆けるゆいぼんと同じ気持ちと同じ瞬間を共有していた。

隣のクラスのテリトリーの1マス前でゴールすると、ゆいぼんは服が汚れるのも気にせず倒れ込んだ。


「ふわぁ、これ結構きつい...」

「大丈夫?」


ゆいぼんに手を差し出すと、ゆいぼんはオレの手のひらに素直に手を伸ばした。

ゆいぼんの手は温かく、その温もりにオレの胸がとくんと鳴った。


「悠永くん、ありがと。すっごく楽しかった。疲れるけど、またやろうね」

「う...うん...」


ゆいぼんの笑顔が視界に入ると嫌だと言えなくなる。

いや、本当は...楽しかったんだ。

また一緒にやりたいって思ったんだ。

いつも巻き込まれてやっていたけど、オレは自分の意思でやりたいとか一緒にいたいとか思うようになっていた。
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