二度目の初恋
「あっ!あったぁ!」


突然ゆいぼんが叫んだ。

オレから50メートル以上離れたところでゆいぼんはオレに手を振っていた。

オレが走って行くとゆいぼんはじゃじゃーんと効果音をつけてオレの前に何かを差し出した。


「これって...」

「そう、四つ葉のクローバー。ちなみに2本。1本ははるどん、もう1本はももかのお母さんにあげる」

「えっ?ゆいぼんの分は?」

「わたしはいいの。皆の幸せはわたしの幸せだから。わたしは皆が幸せな顔していればそれが1番なんだ」


その言葉を聞いてオレの目がじんわり熱くなり、泣き出しそうになった。

皆の幸せが自分の幸せ...。

似たようなことを父も良く言っていることを思い出した。


――俺は警察官だから皆の安全を守るのが仕事だ。だけど俺は仕事だからそうしているんじゃない。人々の安全を守ることが幸せに繋がるなら俺はそれで十分だと心から思っている。それが俺にとっては幸せなんだよ。


父は優しくて強くてカッコ良くて俺の憧れだった。

父みたいになりたいと思い、父に空手と柔道を教えて下さいと頼み込んだ。

それもまたゆいぼんに背中を押されたからだった。

ゆいぼんと父は考え方が似ているのだ。

ゆいぼんは...憧れ。

オレの憧れなのかもしれない。

その時のオレはそう思っていた。


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