二度目の初恋
彼女は高城怜奈(たかじょうれな)という名前だった。

わたしと怜奈ちゃんは家が近所で親同士も仲が良く、いつも一緒に遊んでいたらしい。

わたしは怜奈ちゃんを家に招いた。

わたしのことを話したり、怜奈ちゃんの話を聞いたり...。

昔もこんなことがあったのかもしれないけれど、わたしは生憎覚えていない。

だけどこれからも怜奈ちゃんと一緒にいれば思い出すかもしれない。

わたしは怜奈ちゃんの話が一区切りついたところで友達のことを聞いてみた。


「あの、怜奈ちゃん」

「ん?」


怜奈ちゃんは用意したアイスコーヒーに手を伸ばした。


「その...わたしの友達に会いたいというか...。わたし、何も覚えてないし、事故の日も何があったか聞かされてないから...知りたいんだ。だから教えてほしいなと思って」


怜奈ちゃんはストローから口を離してコップを優しく置いた。

一瞬だけど怜奈ちゃんの瞳からなんだか暗くて悲しいオーラを感じた。


「アタシから話せることはまあけっこうあるんだけどね、その...事故の日のことはあいつの許可が必要っていうか...」

「あいつ?」

「まあ、1度会ってみてもいいか。アタシから話してみるわ」


もしかして怜奈ちゃんのいうあいつにあたる人がわたしの事故のキーパーソンなのかな?

なら尚更会ってみたい。


「友達ってくくりで言えば、後は誰だろ?幼なじみはアタシと泰翔(ひろと)なんだけど...」


この前会ったあの子はどうなんだろう。

わたしは頭をひねってあの子の名前を思い出した。


「百瀬伽耶ちゃんって子がこの前家に来たよ」

「ああ!ももかか!」

「ももか?」

「百瀬伽耶、略してももか。ちなみにアタシはたかれな。ゆいぼんはゆいぼん。うっわ、懐かしい!」


やっぱり懐かしいって思えるんだ。

わたしは新しい言葉を学習しているみたいでなんだか変な感じだ。


「それにしても、ももか冷たいなぁ。ゆいぼんが帰って来てたの知ってたなら言ってくれたら良かったのに」

「伽耶ちゃんは冷たくないよ。わたしの妹の面倒見てくれてたみたいだし、週末はお料理作ってくれてたんだよ」

「ふ~ん。そうなんだ...」


怜奈ちゃんはどこか悲しそう。

時々ちらつくこの影は一体なんなのだろう。


「ま、いいや。アタシはこれからゆいぼんのために全身全霊頑張る。アタシも協力するから絶対記憶取り戻そうね!」

「うん」


怜奈ちゃんはこんなわたしを受け入れてくれた。

わたしも怜奈ちゃんの期待を裏切らないように、怜奈ちゃんに笑顔を見せられるように頑張るよ。


< 12 / 365 >

この作品をシェア

pagetop