二度目の初恋
「お前ら、いつまでもここにいたら迷惑だろ。怜奈のぶっ細工な顔見たくねえから俺は行くぜ。俺はゆいぼんと花火やる」


泰翔はそう言うと由依の左腕を掴んで歩きだした。

胸にチクリと針が刺す。

刺された場所とその周辺に痛みがじわじわと広がって血が滲んでくる。

この痛みもこの苦しさも起因は由依だ。

由依は変わらず、オレの心を揺さぶる。

いつだって感情の起伏は由依に支配されている。

まるで大縄跳びの回し手がオレと由依でも、由依が主導権を握っているように、いつも合わせるのはオレの方なんだ。


「ちょっと、泰翔!待ちなさいよ!」


たかれなが2人をおう。

伽耶はオレのシャツの裾を引っ張った。


「悠永、私たちは帰ろう」


オレは......首を真横に振り、伽耶の腕を掴んで走り出した。


「悠永!待って!」

「ごめん、待てない!せめてたかれなに追いつくまでは走るよ」


ここで逃げたらダメだって言っていた。

逃げたら進めない。

前に進むためには逃げずに、時に立ち止まってでも進む努力をするしかないんだ。

オレは7年かけてやっとそれに気づいた。

逃げてはいけない。

変わらないことに安心してばかりではいられない。

何かを失ってでも、

自分を犠牲にしてでも、

欲しいものは欲しいと貪欲になって

掴みに行くしかないんだ。

あの日守れなかったなら、

今度こそは必ず守る。

由依との約束も、

由依自身も、

オレの気持ちも、

全て守り抜く。

オレならきっと大丈夫だ。

そう、信じる。

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