二度目の初恋
「悠永くん、手伝うよ」


噴出花火の残骸を片付けている際に由依が側に来て一緒にゴミを拾ってくれた。

たかれなのお母さんはガーデニングには興味がないようで花をあまり植えてないから、花火で飛び散る火の粉を気にせずに出来た。

今日は本当に色んな奇跡と再会した友人達に感謝だ。


「悠永、それ片付けたら帰ろうね。私、荷物取って玄関前で待ってる」

「分かった。すぐ行くから待ってて」


泰翔は明日も早朝から部活ということで手持ち花火をやるだけやって先に帰ってしまった。

片付けこそ、男の仕事だというのに。

といっても天才でイケメンの彼には専ら関係のないことかもしれないが。

バケツに燃えカスを入れ、たかれなのとこらに持って行こうとすると由依がオレを呼び止めた。


「悠永くん...待って」


由依はちょっとためらいがちに言った。


「どうした?」


由依は昔から気持ちが顔にも行動にもわりと出やすい。

久しぶりにオレの名前を呼んではずかしがっているのかもしれない。

7年前に失った記憶も、7年間で開いた心のキョリは思ったよりも深い。

底が見えなくて限りなく真っ暗な穴に、オレたちが感情と思い出をプレゼントして溢れかえるくらいに満たしてあげるんだ。

それが17になったオレの最初の誓いだ。

由依はちょっとはにかんで体を左右に少し揺らしながら言った。


「お誕生日...おめでとう。...まだちゃんと言えてなかったから」

「ありがとう。微かにでも覚えててくれて嬉しい。じゃあオレ、行くね。伽耶のこと待たせちゃ悪いから」

「あの...あのね!」


由依がオレの左腕を両手で掴んだ。

そこから感じる熱に血がふつふつと沸いてくる。


「約束...してほしいの」

「約束?」

「うん。あの......その.....わたしもがんばって思い出すから、悠永くんも...悠永くんも...」

「手伝うよ。自分の過去からも...ゆいぼんからも...逃げない」

「悠永くん...」


オレは由依の腕を払うと、その小さな色白の両手を、それより一回りも二回りも大きいオレの両手で包み込んだ。


「大丈夫。オレが必ず笑顔にするから」


夜空で星たちが光り輝いている。

でも、それよりも、何倍も何十倍も、何百倍も何千倍も何万倍も...由依の笑顔がオレを照らしてくれていた。

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