二度目の初恋
ゆいぼんがいなくなった後からアタシの記憶は鮮明でなくなった。

5年生の宿泊学習も、6年生の修学旅行も、それ以外の毎日だって、輝いて見えなかった。

ゆいぼんの隣でアタシが笑った時の笑顔がどんな時よりも鮮やかで眩しくて目を細めたくなるくらいキラキラしていた。

卒業アルバム以外の写真だってそう。

アタシは笑っていても心が笑っていなかった。

ゆいぼんがアタシの隣にいない喪失感が常にあってアタシは心から笑えていなかったんだ。


「怜奈ちゃん...1つ聞いてもいい?」

「うん、何?」


ゆいぼんが写真を次々に指差す。


「これも、こっちも、これも...このページのこの写真も......。3年生より先の写真はわたしと悠永くんが隣にいることが多いよね?どうして?」

「どうしてって聞かれても...」


悠永は自分から話すだろうか。

それとも話さないでゆいぼんが思い出すまで待つのだろうか。

思い出さない方がいいなんて思ってないよね、きっと...。

アタシは足がビリビリしてきたから、一度座り直して言った。


「ゆいぼんは悠永と仲良くなってからは悠永といることが多かったんだ。ゆいぼんはおとなしくてポーカーフェイスだった悠永に笑うことも泣くことも怒ることも教えた。悠永もだんだんゆいぼんのことを受け入れて...2人は.....」


2人は......。

なんて言ったらいいをだろう。

そもそもアタシがベラベラ喋るのは良くない気がする。


「なんでわたし、悠永くんの誕生日を覚えていたんだろ...」


ゆいぼんの記憶の蓋がカタカタと音を立てているのに気づいた。

ゆいぼんが何か思い出すかもしれない。

アタシは何も言わず、黙って見守ることにした。

< 162 / 365 >

この作品をシェア

pagetop