二度目の初恋
アタシはその宣言を早速全うするために悠永に電話をした。

悠永は今ではバイト戦士らしいから、確実に出てもらえるようにわざと0時過ぎに電話した。

20コールしたところで無視をするのに懲りたのか、悠永の低い声が聞こえた。


「はい」

「アタシ、高城怜奈。こんな遅くにごめんねえ」

「悪気があるならかけてくるなよ」


悠永の声は不機嫌そのものだった。

中3の時より一層低くなった気がする。

もともとぼそぼそ喋りで声も低くて聞き取りずらい声だとは思っていたけど、余計に酷くなった。

それはひとまず置いといてアタシは話し出した。


「悠永さ、あれ以来ゆいぼんと会ってる?」

「いや...」

「ゆいぼんと再会しちゃったんだからもう逃げられないよ」

「分かってる」


それにしても悠永は言葉のキャッチボールが出来ないヤツだ。

こんな感じで色々と大丈夫なのかと数ヶ月だけお姉さんのアタシは不安になる。


「ゆいぼん今日家に来てアルバム見たのよ。そしたら、なんで悠永と一緒の写真が多いんだろうって言ってた。アタシ思うんだけど、やっぱり悠永はゆいぼんにとって特別だったんだよ。誕生日も覚えてたくらいだし、だから悠永、ゆいぼんに...」

「オレも悩んでるんだよ。ゆいぼんの記憶を取り戻してあげたいし、ゆいぼんにもう1度笑ってもらいたいって思ってる。だけど、どうしたらいいか分からないんだ。ゆいぼんにしてもらってばかりで何にもしてあげられなかったから、ゆいぼんが喜ぶことのひとつも知らないんだ」


悠永は誰よりもゆいぼんの特別で、ゆいぼんを大事に思ってたのに、ゆいぼんに対する罪悪感も人一倍大きい。

それが分かるから軽率に言葉をかけられない。

だけど、アタシは悠永に伝えなければならない。

それがアタシの義務だ。

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