二度目の初恋
「あれ?百瀬じゃん」


泰翔のバカ!

どんなタイミングで来てんのよ!

間が悪すぎでしょ!

ってか、空気読めないの?

思考停止からアタシの頭はフル回転になった。

アタシはバッグを手に持ち、彼らの前に出ていった。


「うわっ。そこにいたのかよ」


本当はしっぺでもビンタでもしてやりたかったけど、知らない男子の前だし、ももかに好意を寄せているようだし、アタシが変にでしゃばって伽耶の顔に泥を塗るわけにもいかない。

アタシは頭を下げた。


「すみません。アタシこの2人の小学校時代の友人で...。ちょっとお話があるので伽耶さんとはまた後日お話し下さい。では、アタシたちはこれで」

「あっ...はい」


その男子はアタシたちが歩き出す前に、ももかに軽く右手を挙げ、「じゃ」というと颯爽といなくなった。


「誰だ、アイツ?」

「笛吹律希。私のストーカー」

「へ?ストーカー?」

「見られたのはシャクだけど、助けてくれてありがとう...たかれな」

「はいはい」


素直じゃないっていうか、尖ってるところはあるけど、悪い子ではないんだよね。

だからああやって告白してくる人もいるんだろうし。

ももかもちょっと視点を変えれば、もしかしたら今よりもっと楽になれて、笑顔で素敵な毎日を送れるかもしれない。

幸せは意外と足元に転がってるものかもしれない。


「何?」


アタシがももかの横顔を長いこと見ていたから、ももかがイライラした様子でこちらを睨んできた。

おそらく悠永の前ではおしとやかなのだろうけれど、人が変わったようにアタシには食ってかかる。

素性を明かせる仲ってことで良い傾向にあると言われればそうだと思う。


「なんでもない。それより早くいこう。もう7時過ぎてるし」

「ったく、なんで今日なんだよ。疲れてるから帰してくれよ」

「それは無理。アタシだって待ったんだから」


色々とね。

今日の今日こそはと心決めて来たんだからもう後戻りは出来ない。

アタシは...進む。




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