二度目の初恋
「2人にもゆいぼんの記憶を戻す手伝いを全面的に協力してほしいの。この通り...よろしくお願いします」


アタシが頭を下げると、泰翔は「ふ~ん」と鼻を鳴らし、ももかは表情ひとつ変えずカフェラテを口に含んだ。

アタシは畳み掛けた。


「何よ、2人共。そんなんじゃわかんないよ。言いたいことあるなら、はっきり言って」

「じゃあ、はっきり言う。オレはそんなの無理だ」

「なんでよ。ゆいぼんが昔の記憶を忘れたままでいいの?泰翔はゆいぼんに思い出してもらえなくてもいいの?」

「別に構わない。オレは今を大事にしたいからな。今ゆいぼんともう1度向き合ってゆいぼんにオレの想いを少しずつ伝えているところだ。忘れたままだってこれから新たに思い出を作ればいいじゃん。ゆいぼんに無理させることもないし。...な?百瀬もそう思うだろ?」


ももかは頷いた。

やっぱり......。

やっぱりだった。

この2人はゆいぼんに記憶を思い出させたくないんだ。

なぜなら...都合が悪いから。

自分にとって不利益となることはしたくないんだ。


「私も無理に思い出させる必要はないと思う。無理させちゃ可哀想だし、それに思い出す時がくれば徐々に思い出すだろうし、別に私に出来ることなんて何もないと思うけど」

「百瀬の言う通りだ。俺たちは見守ることしか出来ない。見守ることも協力のひとつだって認めてもらえるならそれくらいはするけど」

「なら...それ以外何もしないで」

「は?」

「どういうこと?」


とぼけてる。

なんでゆいぼんとやっと会えたっていうのに、喜んで協力できないの。

この2人は本当に...

本当にゆいぼんの友達だったの?

アタシもこんな非常識な人と友達だったの?

ガッカリさせないでよ。

嫌いになりたくないんだから...。

アタシはもう半分泣いていた。


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