二度目の初恋
アタシがそう言った、次の瞬間。


――びしゃっ...。


アタシの左斜めに座っていたももかがアタシの顔に水をぶっかけた。


「ももか...!」

「たかれなはゆいぼんの記憶が戻った方が都合がいいからそう思えるだけ。結局たかれなも偽善者ぶってるけど、私たちと同じよ」

「同じじゃないっ!アタシはゆいぼんを思って...」

「違うわ。たかれなは昔から泰翔のことが好きだった。ゆいぼんが悠永への想いを思い出して2人がくっつけば、泰翔が自分を好きになってくれる。そう思ったんでしょう?」


気づいていないわけなかった。

ももかは気付いていた。

でも泰翔は......。


「んだよ、それ......」


絶句。

これだけ近くにいたのに、想いさえも気づいてもらえてなかったなんて...。

アタシ、どんだけ惨めなの。

やっぱりアタシのことなんてちっとも見てくれてなかったんだね。

ゆいぼんの付属品...。

ゆいぼんみたいに笑ってれば皆寄ってくるからゆいぼんと同じように笑うようにした。

皆に優しく明るく振る舞おうとした。

努力してもゆいぼんみたいになれなかった。

なれなくても仕方ないって思った。

だけど、諦めたくないものもあった。

それが泰翔のことだった。

天才でイケメンだけど、俺様気質で鈍感で扱いづらい。

それでも、いや、そうだから、アタシは泰翔を好きになった。

泰翔の一番近くにいて泰翔を笑わせてあげたいと思ったんだ。

なのに実際は......。

アタシはふーっと長い息を吐いた。

お店の迷惑にならないようにと今さらながら冷静になろうと努める。

怒りや悲しみや憎しみで震える気持ちを必死に鎮めようと胸を押さえながら、アタシは泰翔の目を見つめて話し出した。


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