二度目の初恋
俺と伽耶は同時に店を出て一定の距離を保ちながら同じ道を歩いて駅まで来た。

そこから電車に乗り、見慣れた立葵駅の改札をくぐり抜け、あの公園を目指して歩いた。

あの公園を境に右か左かで俺たちは別れていた。

左に曲がれば俺やゆいぼん、怜奈の学区。

右に曲がれば伽耶と悠永の家がある。

この公園が俺たちの家だけじゃなく、運命の行く末を分けることになるとはあの時までは考えもしなかった。


「じゃあ、ここで」

「今日はお疲れ様。百瀬もゆっくり休めよ」

「もちろん、ゆっくり休ませてもらう。昨日今日と肉体的に疲れた上に今日は最後に精神的に大ダメージを受けたからね」

「ははっ。そうだな。んじゃ、またな」

「また」


伽耶と別れ、1人きりで家路を歩く。

隣を見ても怜奈はいない。

あんなことを言われたから俺は余計感じてしまう。

怜奈がいない夜道の寂しさを、

怜奈の声で震えない鼓膜の静かさを、

怜奈との言い争いがない空虚な道のりの長さを、

俺はまざまざと感じさせられる。

怜奈はまるで空気のようだ。

当たり前に俺の周りのどこかにいて気づかない内にその存在を体内に取り入れていた。

そしてなくなって初めてその存在の大きさや大切さを身に染みる。

窒息しそうになったらその時は......

俺は怜奈を探すんだろう。

求めるんだろう。

そして......

どうするんだろう。

俺は普段見上げることのない夜空を見上げた。

空には満天の星とまん丸の月が輝き、俺の進む道を照らしていた。

秋の夜風がふわっとシャツを揺らし、そっと肌をすり抜ける。

俺は何かを探し始めた。


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