二度目の初恋
「泰翔くん...泰翔くん、大丈夫?」

「えっ?あっ、うん。大丈夫」


またぼーっとしてしまった。

考えても考えてもどうしようもないのにいつまで俺は考え続けるんだ?

俺は邪念を振り払うため、ゆいぼんにバレないようにテーブルの下で左腕の皮膚をつねった。

微妙に痛みが走り、少しばかりふわふわとしたものが消えていった気がした。

そして何事もなかったかのように冷静を装って話し出した。


「そうそう。ゆいぼんとクリスマスに行きたい場所があるんだよ。これ見て。キレイなイルミネーションだろ?」


俺は自分のスマホの画面に映る写真をゆいぼんに見せた。


「うん、すごくキレイだね。どこのイルミネーション?」

「これはこっから何個か先の駅にあるアウトレットのイルミ。ゆいぼんの都合が良い日にいこう。今月中のいつなら大丈夫?」

「えーっとね...たしか...」


さくらんぼが描かれた女子らしいスケジュール帳をパラパラとめくり、予定を確認するゆいぼん。

その真剣な顔もどこか懐かしく、愛しい。

ずっと見ていられそう。


「あっ、ごめん。24日は怜奈ちゃんとカラオケの約束してて25日はお家でパーティーだ」

「そっか。なら...23日とかは?別に期間中に行けばいいからクリスマスは関係ないよ」

「23日は大丈夫」

「んじゃ、23日にしよう。今から楽しみだなぁ...」


俺の脳裏にはデートプランが思い浮かんだ。

ゆいぼんと買い物をしてアウトレットの近くにある観覧車に乗ってイルミを見て...そして...告白する。

ゆいぼんを俺のモノにするという永年の夢を叶える時がようやく訪れたんだ。

このチャンスを逃すわけにはいかない。

邪念はぶんぶん振り払ってクリアな状態で当日を迎えよう。

俺はそう決心し、23日までにゆいぼんに何をサプライズプレゼントするかを毎日考えながら過ごした。

そうすることで脳内から俺の心を揺さぶる悪者を追い出そうとしていた。

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