二度目の初恋
お腹もいっぱいになったところで観覧車に乗った。

事故で車に跳ねられてから記憶にはないものの、無意識下では拒否反応が出ているらしく乗り物全般が苦手と言っていたゆいぼん。

俺は電車に乗る時は必ずゆいぼんの目の前に乗るようにしていた。

しかし、観覧車はそうはいかない。

ほぼ360度景色が見えてしまい、恐怖心を煽ってくる。

ゆいぼんに断られても仕方がないと半ば諦めていたけれど、ゆいぼんは乗ってくれた。

丸くて狭い密室空間にゆいぼんと2人きり...。

俺の胸はドキドキしっぱなしで、それをまぎらわすように窓の外に目を向けて「人がたくさんいる」とか「人が小さく見えるな」とかわざと子供っぽいことを言っていた。

俺が異常な弾丸トークを繰り広げている真ん前でゆいぼんは何やら考え事をしているようでどこか上の空だった。

俺が降りる直前でゆいぼんに話しかけた。


「ゆいぼん?」


俺の声は聞こえなかったみたいだ。

ならばと思い、ゆいぼんの肩に手を伸ばすと、さすがのゆいぼんも気づいた。


「うわっ」

「ごめん。ゆいぼん何も聞こえてないみたいだったから肩叩けば気づくかなと思って」

「わたしこそ、ごめんね。なんとなくだけど、思い出したことがあって...」

「えっ...?」


思い出した?

何をだ?

ゆいぼんは何を思い出したんだ?

俺がゆいぼんに聞こうとする前に観覧車のドアは開いた。


「ご搭乗ありがとうございました!」


俺は先に飛び降り、ゆいぼんの手を引いた。

ぴょんとうさぎのように降りたゆいぼんが可愛いと思う余裕はまだあったが、ゆいぼんが思い出した内容が気になる。

俺はイルミネーションを見に行く道中でゆいぼんに尋ねた。


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