二度目の初恋
「なあ、伽耶。今年のクリスマスは一緒に過ごしてくれてもいいんじゃないか?俺、毎年誘ってるのに1度も遊んでくれないじゃん。冷たくね?」

「ホントしつこい。私はクリスマスだろうが年末だろうが関係なく塾があるの。塾がなくても勉強したいし、フルートもピアノも練習しなきゃならないし、とにかく忙しいの。暇人と戯れてる暇はない。分かったならさっさと帰って」


3年生が引退し、私は吹奏楽部の部長に、笛吹くんは副部長になった。

だから戸締まりまで一緒にやらなければならなくなったのだけれど、この懲りない男は毎日毎日私の空き時間を探ってくる。

迷惑だと言おうが、先生に言いつけると言おうが、彼は諦める気はなく、もう何を言っても意味が無さそうなので私が先に諦めた。

私にかまってもらえることが最大級の喜びなのだとしたら、話すくらいなら仕方がないと思って毎日同じような会話をしては笛吹くんのご機嫌取りをしている。


「なんとしても今年こそは伽耶と同じ時間を1分でも1秒でも過ごすから。覚悟しておいて」


1秒なら、すれ違うだけでもオッケーだ。

それくらいなら奇跡的に同じ道を通れば可能性がある。

そもそもそれは運命の人としか起こり得ない。

この人は私の運命の人でも何でもないのだから大丈夫。

私はそう思ってあまり彼に関して深く考えないようにしていた。

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