二度目の初恋
「ちょっとぉ、伽耶。あんたうるさいわよ~。あたし眠いんだから、うるさくしないでちょうだい。反抗期もほどほどにね~」


母はそれだけ言ってまた降りていったようだ。

とんだ勘違いだが、それはそれで都合が良い。

私は母が1階に戻ったのをなんとなく察知してから、自分の心を具現化したようなぐちゃぐちゃでぼろぼろな部屋のど真ん中に寝そべった。

電気が眩しくて思わず目を細める。

視界を左腕で遮ると、部屋はかすかに暗くなった。

どこからか辞書特有の古本屋っぽくて少し懐かしい匂いと、枕に染み込んだ私の臭いがする。

それと同時に脳が感知する行き場を失った感情。

私の体内から出て部屋中を浮遊しているみたいだ。

悲しみ、苦しみ、憎しみ、痛み......。

全てが濁りきったどろっどろの感情だ。

これらを抱えて生きるのは苦しすぎる。

もう2度と私に戻って来ないようになんとかするしかない。

なんとか...する。

その方法はもう既に思い付いていた。

記憶があろうがなかろうがゆいぼんは悠永に惹かれた。

ならばこれ以上惹かれないように、磁石の向きを逆にすればいい。

私が逆転するためには、

私が幸せになるためには、

それしか手段がない。

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