二度目の初恋
ゆいぼんは昔から変わらぬ愛嬌のある優しい笑顔で私に話しかけてきた。


「伽耶ちゃん、久しぶりだね。紀依がいつもお世話になってます。最近はやっと私の問いかけに反応してくれるようになって、それで...」

「紀依のことは後にして。今日は私からゆいぼんに大事な話をするから。そこに座ってもらえる?」

「あっ...うん...」


紀依の話はどうでも良かった。

それよりも私には果たさなくてはならない目標があってそれを達成するための時間がないのだ。

もしもゆいぼんと悠永が運命の2人だとしたら、何の連絡をしていなくてもここで会えるはず。

そこで悠永からゆいぼんにあの日の話をしてゆいぼんが納得して結ばれたとしたら、私の願いはおそらく一生叶わない。

そうならないためにも私はここで食い止める必要がある。

これは賭けでしかない。

ゆいぼんが私の話を聞いて取るであろう行動を何パターンか考えた上で導きだした最善の道。

私の運命も将来も私の手の中にある。

全ては理想のため。

全ては自分の幸せのため。

他人の幸せが自分の幸せだなんて私はそんなキレイゴト言えない。

だったら、私は真っ黒で泥々に濁った心で最後まで自分の気持ちだけを信じ、それを貫くしかないんだ。

私は胸に手を当て深呼吸をひとつした後、ゆいぼんの顔を見ず、真っ直ぐ公園の出口の先の横断歩道を見つめて言葉を吐き出した。


「これから言うことは7年前の今日実際にあったことなの。全て真実...。それを受け止める覚悟はある?」


ゆいぼんは一瞬目を伏せたが、私の方を向いてこっくりと深く頷いたのが分かった。

それで私も覚悟を決めた。


「分かった。じゃあ...話すわ。7年前の今日。佐倉由依、あなたは向こうの道路に飛び出したところをワゴン車に跳ねられたの。そしてその原因となったのは......サッカーボール。悠永が蹴ったサッカーボールだったの」

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