二度目の初恋
「最後の最後で悪い子になりきれなかったってことか」


私はその声を聞いたら、ぴたりと涙が止まった。

心拍数が上がり、悪寒で上半身が震えだした。


「伽耶、泣くならこんなとこじゃなくて俺の胸で泣けよ」


声の主はしゃがみこみ、弱りきった私の体も心も包み込んだ。

幾度となく対立してきたのに、こんな場面で登場されるとさすがの私も誤作動を起こす。


「なんで......なんで...笛吹くん、なの?」


そんなことを言いながら、彼の胸に額を押し付けて泣いている。

理想のシチュエーションに少し喜んで泣いてる涙も混ざっているかもしれない。

私は本当にバカでバカでどうしようもない。


「俺が伽耶の運命の人だからかな?」


そしてこの男もどうしようもないバカだ。

私は右手で彼の胸に拳を叩きつけた。


「バカ...」

「はいはい。どうせ俺はバカですよーだ!」


私はその状態のまま、しばらく泣きわめいていた。

その間ずっと、彼は私の背中を、その温かい手でさすってくれていた。

私は大切な何かを失い、新しい何かを得た気がした。

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