二度目の初恋
6月に入り、じめじめとした日が続くようになった。
学校もバイトも順調に通えていてあの後怜奈ちゃんとも泰翔くんとも変わらずに会えている。
大して変わらない毎日を送っているように思えるけど、確実に変わってきたことがある。
それはわたしが夢を頻繁に見るようになったことだ。
しかも悪夢ではなく、あの黒髪の少女が毎回どこかに行き、なにかをしている夢。
はっきりと思い出せないことも多くて具体的に何を示しているのか分からないのだけれど、今度半年に1回の検診に行った時にでも先生に話してみようと思った。
わたしが通っているのは都内の大学病院の
神経内科や精神科。
事故直後は脳外科に行っていたのだけれど、最近は記憶喪失とそれによるストレス対応の治療のためにその2つの専門医に話を聞いている。
後2ヶ月後くらいか...。
そんなに遠い未来でもない。
その頃にはもう少し周りの人との関係を良くして良い精神状態で診てもらいたいな。
長年お世話になっている先生方に変化がないって言われるのも悲しいし、言う先生方だって悲しいと思う。
よし、頑張ろう。
気合いを入れ直し、店のお花たちに水をあげようとすると鼻先にぽつんと雫が乗った。
顔を上げて空を見上げると、空は灰色に濁っていて神様が涙を流し始めていた。
「あら、雨降ってきたわね。こんな感じじゃお客さんも来ないだろうし、由依ちゃんもう帰っていいわよ」
「いや、でも後30分...」
「いいからいいから。濡れて帰ったらあなたのママに叱られちゃうわ。私の気持ちも汲んでよ。ね?」
そう言われてしまったら仕方がない。
「それではお先に失礼します」
「はいよー。お疲れ様」
わたしはエプロンを取り、リュックにたたんで入れると持ってきた折り畳み傘を出した。
裏口から出て小さい傘を開き、中に入る。
わたしの家は駅の南側だから逆方向。
いつも駅前を通ってから帰る。
時刻は15時32分。
バスもあることはあるのだけれど、わたしは歩いて帰ることにした。
傘にぶつかる涙の音。
ポタッ...ポタッ...がボタボタっに変わる。
雨が強く吹き付けてきてわたしは歩けなくなった。
学校もバイトも順調に通えていてあの後怜奈ちゃんとも泰翔くんとも変わらずに会えている。
大して変わらない毎日を送っているように思えるけど、確実に変わってきたことがある。
それはわたしが夢を頻繁に見るようになったことだ。
しかも悪夢ではなく、あの黒髪の少女が毎回どこかに行き、なにかをしている夢。
はっきりと思い出せないことも多くて具体的に何を示しているのか分からないのだけれど、今度半年に1回の検診に行った時にでも先生に話してみようと思った。
わたしが通っているのは都内の大学病院の
神経内科や精神科。
事故直後は脳外科に行っていたのだけれど、最近は記憶喪失とそれによるストレス対応の治療のためにその2つの専門医に話を聞いている。
後2ヶ月後くらいか...。
そんなに遠い未来でもない。
その頃にはもう少し周りの人との関係を良くして良い精神状態で診てもらいたいな。
長年お世話になっている先生方に変化がないって言われるのも悲しいし、言う先生方だって悲しいと思う。
よし、頑張ろう。
気合いを入れ直し、店のお花たちに水をあげようとすると鼻先にぽつんと雫が乗った。
顔を上げて空を見上げると、空は灰色に濁っていて神様が涙を流し始めていた。
「あら、雨降ってきたわね。こんな感じじゃお客さんも来ないだろうし、由依ちゃんもう帰っていいわよ」
「いや、でも後30分...」
「いいからいいから。濡れて帰ったらあなたのママに叱られちゃうわ。私の気持ちも汲んでよ。ね?」
そう言われてしまったら仕方がない。
「それではお先に失礼します」
「はいよー。お疲れ様」
わたしはエプロンを取り、リュックにたたんで入れると持ってきた折り畳み傘を出した。
裏口から出て小さい傘を開き、中に入る。
わたしの家は駅の南側だから逆方向。
いつも駅前を通ってから帰る。
時刻は15時32分。
バスもあることはあるのだけれど、わたしは歩いて帰ることにした。
傘にぶつかる涙の音。
ポタッ...ポタッ...がボタボタっに変わる。
雨が強く吹き付けてきてわたしは歩けなくなった。