二度目の初恋
一瞬の出来事に唖然としていると男の子が慌てて駆け寄ってきた。


「大丈夫?ケガは?」

「ない...です。あの...助けてくれてありがとうございます」


わたしがそう言うと男の子は俯いた。

男の子の肩が震え始める。

一体どうしたんだろう。

男と戦って疲れてしまったのだろうか。

わたしは手を伸ばして男の子の左の手のひらに自分の手のひらを重ねた。

男の子が顔を上げる。

その瞳からは雨よりも生暖かい光の雫が流れていた。

それでわたしは確信した。

この人は...わたしを知っている。

わたしもこの人を知っている。

胸騒ぎがする。

頭が痛い。

脳の最奥地が震えている。

わたしの記憶の蓋がカタカタと音を立てている。

この人は一体...一体誰なの。

他の人とは違う波動を感じる。

強くて濃くて暗い負のオーラ。

そこから感じ取れるのは...寂寥と後悔...。

わたしは土砂降りの中で、彼にきちんと声が届くように声を張り上げた。


「わたしはあなたを知っています。名前は分からないけど心が覚えてるんです。教えてください。あなたは...わたしの...友達...ですか?」


言い切ってわたしはひどいめまいに襲われた。

雨に打たれて体温が低下したせいだろう。

だけどここで気を失ったら、この人ともう会えないかもしれない。

ダメ。

ダメだよ。

まだ堪えて。

堪えてよ、わたし。

霞んでいく半分だけの視界と耳鳴りでほとんど聞こえない耳で、わたしはなんとか目の前の彼を感じ取ろうとした。

そして...微かに見えた。

聞こえた。

彼がわたしを......。


「友達......じゃないよ」


わたしの意識はそこで途絶えた。



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