二度目の初恋
3月3日。

オレは再び佐倉家に赴いた。


「もう来ないでって言ったわよね?本当にしつこい人」


由依の父親が母親が買い物に出ている内にオレを中に招き入れてくれたお陰でオレはなんとかリビングにいさせてもらえている。

由依の母親は今日も少し機嫌が悪いようだが、オレが持ってきた花束が気に入ったのかこの前よりは落ち着いているように思えた。


「分かってます。それでもオレはここに来ました。どうしても伝えたいことがあったんです」

「分かってるわよ。どうせまた土下座するんでしょう?何度謝られても私は許す気ないから」


そう言われてもオレは何十回目かの土下座をした。

床は冷たく固い。

そこに額を押し付けとにかく謝る。

亡き父から学んだことだ。


「7年前の今日は本当に...本当に本当にすみませんでした!由依さんを傷付けてしまったのはオレです!死ぬまで恨まれても憎まれても構いません!ですが......」


オレは顔を上げて真っ直ぐに由依の母親の瞳を見つめた。

由依と同じ大きな瞳と二重瞼。

血の繋がりを感じる。

由依が大切なら、由依をこの世に送り出してくれたこの人のことも、オレは大切にしなければならない。

これ以上間違えないようにオレがなんとかするしかない。


「ですが、これ以上オレのことで由依さんの前で喧嘩しないでください」

「はあ?あなた、私達が悪いみたいな言い方止めてもらえる?」

「確かにあの事故はオレのせいで起こってしまいました。それは紛れもない事実で一生変わりません。しかし、それを引きずっていつまでも過去に縛られて生きるのは辛すぎると思います。実際にオレがそうでした...」


オレは背筋をぴんと伸ばして話を続けた。


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