二度目の初恋
「紀依!」

「うるさいから来てみたら、お姉ちゃんのカレシ?」

「カレシなんかじゃないわよ、こんなの!この人はさいってえな人よ!由依をあんな目に遭わせておいて、由依のことが好きとかなんとかワケわかんないこと言って...」

「ワケわかんないのはお母さんの方でしょ?」

「はぁ?」


また喧嘩に巻き込まれてしまったようだが、知らない内に妹が由依のことを許しているように思えるのは気のせいだろうか。


「いつまでもいつまでも責め続けて何が楽しいの?この人の方がよっぽど潔いじゃない。何年間も罪に苛まれながらも、母親から拒まれながらもお姉ちゃんを想ってる。こんな真っ直ぐな人を責めて、お母さんさいってえだよ」

「紀依、あなた誰に向かってそんな口を...!」

「お母さんって言ってるじゃん。何?違うの?」

「いや、そうだけど......。そう、なのよね......」


母親はやっと気づいたようだ。

ずっと壁を張りつづけ、お母さんとも呼ばなかった紀依ちゃんが自分の母親だと認めて名前を呼んだ。

紀依ちゃんをこんな風に変えたのは、おそらく由依だ。

オレと会わない間、由依は由依なりに努力して周りを良い方向に導いていたんだ。

由依......さすがだよ。

オレは感服した。


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