二度目の初恋
30分の道のりも大分慣れて息が上がらなくなってきた。

学校につくと授業が行われる教室に行って授業を受ける。

3ヶ月通っていれば顔馴染みの人も増え、話はしないけど、なんとなく安心感が生まれていた。

通信制だから基本的には自宅でレポート学習をすれば良いのだけれど、学校に通うという当たり前のことを当たり前に出来るようにするためのサポートとして教室での授業も開講されている。

席は自由で、わたしはだいたいいつも同じ場所に座って授業を受ける。

リュックを脇にかけ、中から教科書とノートを取り出し、次の時間使うものを机の下のスペースに入れておこうとして何かが引っ掛かった。

わたしはそこに手を入れると、ノートが1冊入っていた。

ノートの表紙にも裏にも名前は書かれていない。

他人のノートを見るなんていうことはあまりしたくはなかったのだけど、勇気を持ってパラパラめくってみた。

するとそこにはびっしりと文字や数式が書かれていた。

数学が苦手なわたしには理解出来ない事柄の羅列にクラっとした。

お世辞にも文字が綺麗とは言えないけれど勉強熱心で真面目な人なんだということは一目で分かった。

これを持ち主に届けなくてはならないと思い、授業が終わるや否や職員室に行ってノートを見せた。


「これはもしかしたら大学受験組のものかもね」

「大学受験組って何ですか?」

「佐倉さんが帰った後、4時くらいになると大学受験を受ける人達が第1教室に集まってきて学校がしまるまで自習してるの。その子達のことを先生達の間では受験組って呼んでる。きっとその子達の誰かが忘れていったんだと思うわ。届けてくれてありがとう。佐倉さんも忘れ物しないようにしてね」

「はいっ」


わたしはノートにメッセージを書いたことを隠して立ち去った。

ノートから伝わる頑張りにエールを送らずにはいられなかった。


――がんばって下さい。わたしもがんばります。



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