二度目の初恋
目的地まであと何キロだろう。

わたしは悠永の腰に手を回し、のろのろ自転車の後ろで盛大に文句を言っていた。


「ねえ悠永、もっとちゃんと漕いでよ~」

「これでもちゃんと漕いでるって」

「遅くない?」

「文句言うなら降りた方がいい」


そんなことを言うのでわたしは怒って悠永の背中を肘でコツいてやった。


「痛っ。何すんだよ」

「わたしをいじめた罰だ!」

「いじめてなんてない」

「っていうかさぁ、悠永わたしの記憶が戻ってから、なんか冷たくない?ほんのちょっと前まではか弱い女の子を守るって感じで張り切ってたみたいだけど、今は当たり強いよね~」

「そんなことない」


さっきからこっちが話かけてあげてるというのに、ないないしか言わない。

無自覚なのかなんなのか良く分からない。

昔から掴み所がない人でわたしは悠永に質問攻撃をしていた。

ももかは悠永の思っていることとか考えていることが分かると言っていたけど、わたしは自分と違い過ぎて全然理解出来なかったのだ。

それでも何とかこの鉄壁のハートを壊したいと思って常に話しかけていたんだけど、本当はやっぱりわたしのことうざいって思ってるのかな。

もしそうなら...辛いな。

わたしはももかみたいに悠永を分かってあげられないし......悔しい。

心の風船が空気が徐々に無くなってしぼんでいく。

わたしは悠永の背中に額をつけてちょっと落ち込む。


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