二度目の初恋
自宅から自転車で20分以上かかった。

良くこんなところに歩いて来ようと思ったものだとわたしは若かりし頃の自分を振り返った。

子供の時は自分はなんでも出来る、自分の可能性は無限だって思っていた。

想像するのは身近なことから宇宙旅行まで。

あるものないもの何でも頭に思い付いたものを話したり、書いたりしていた。

大人になるにつれてそういうことはだんだんなくなっていって、何をするにも尻込みするようになる。

自分に降りかかってくるであろうリスクを想定してそれが大きいと分かれば、その先に足を踏み出したりしない。

リスクを回避して安全な道を行くんだ。

子供の頃は皆無邪気だった。

わたしももちろんそうだった。

こんなところまで来てしまうその行動力、体力は無限だと思っていた気がする。

わたしは7年という長い歳月を記憶を失くしたまま過ごしてきた。

急に空っぽになった心に一気に色んなことを詰め込まれて混乱しながら日常生活を送ってきた。

事故にあって左腕に麻痺が残り、視界は半分になり、希望も半分になったように感じて絶望していた時もあった。

だけど、今日ここに来てみて改めて分かった。

この世には希望だらけだと。

可能性は無限に広がっていると。

考え方や見方を変えるだけで絶望は希望になるし、有限が無限に変わる。

その逆もまた然りだけど、わたしは目の前に広がる菜の花のように世界中に黄金色に輝いている希望を拾い集めて生きて生きたい。

そして、わたしが歩いていく道を一緒に歩いてほしい人がいる。

それは、何度考えても、ただ1人だけ。


「悠永、行こう」

「ちょっと...由依!」


わたしは悠永の手を引いて堤防をかけ降りた。


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