二度目の初恋
自宅に帰ると七夕パーティーの準備が母だけで寂しく進められていた。

今日は怜奈ちゃんが家に来てくれるから、終始穏やかに過ごせるだろう。


「由依、怜奈ちゃんが来るまでにデザート作っちゃいましょう」

「うん、そうだね。今日は七夕ゼリーだもんね」

「何層にもするから大変なのよ。さ、早く手を洗っていらっしゃい」

「はぁい」


母が張り切っているのがひしひしと伝わってくる。

2人の時も父が来る日には鼻歌を歌いながら手の込んだ料理を作っていた。

父との仲も紀依との複雑な親子関係も決して良好とは言えないけれど、母自身がこうして生き生きと動いてくれているのがわたしはすごく嬉しい。

母なりに不安も心配も悩みも尽きないだろうけど、今日くらいは短冊に願いを書いて庭の木にでも吊るして夜空に想いを馳せればいい。

わたしはなんてお願いしようかな。

両親が仲良く暮らせますように。

紀依ちゃんとお話しできるようになれますように。

わたしの記憶が戻りますように。

記憶が戻ったら友達と笑い合えますように。

願いたいことがいっぱいありすぎて分からないや。

なら、ひっくるめてしまおう。

誰しも願いはただひとつ。

...幸せになれますように。



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