二度目の初恋
「全く、あの子は...」

「仕方ないだろ。紀依だって中3なんだし。反抗期真っ只中の受験生なんてあんなもんだよ」

「だからって由依にあんなこと言うのは酷すぎるわよ」


わたしは...

わたしは...。

拳をぎゅっと握りしめ、その痛みに耐えながらわたしは言った。


「わたしは大丈夫だから」

「でも...」

「それより、わたしは妹のことをなんて呼んでたの?」


わたしの問いに答えたのは父だった。


「紀依ちゃんって呼んでたな。妹にちゃん付けするなんてよっぽど可愛がってたんだな」

「分かった。じゃあ、これからも紀依ちゃんって呼ぶね。パパ、ママ、紀依ちゃん...。皆わたしの大切な家族。今覚えたからもう忘れないよ」


わたしがそういうと、母の瞳から流れ星が一筋頬をなぞった。

父が母の肩に手を乗せ、母を宥めるようににっこり微笑んだ。

そして、父はわたしと母を優しく抱き締めた。

わたしはその温もりを少しだけ懐かしいと思った。

そして、もう2度と忘れないと誓った。



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