二度目の初恋
ゆいぼんが事故で記憶喪失になったのを知ったのは、ゆいぼんとゆいぼんのお母さんが転院に伴い、町を離れた後のことだった。

事故に遭って入院しているのは当日かかってきた電話に出た母から聞いて知っていた。

電話を受けてすぐにでも会いに行きたかったけれど、面会はまだ無理だからと会いにいくのを母に止められていた。

それから数週間後。

ゆいぼんのお父さんがアタシの家に来て事情を説明してくれた。

アタシは当時10歳。

理解しているようで、していなかった。

元気になって記憶が戻ったらすぐ帰ってくると思っていた。

だけど、小学校の卒業式も中学の入学式も中学の卒業式も高校の入学式もゆいぼんは居なかった。

ゆいぼんの事故の後、アタシはまた1人になってしまった。

残った4人を繋いでいたのはゆいぼんだったのだとまざまざと痛感させられた。

ゆいぼんの事故を悠永のせいだと泰翔が責め、悠永は罪の意識にとらわれて泰翔と口を聞けなくなった。

アタシと泰翔、悠永とももか...。

家がご近所同士の幼なじみだった2人組を繋いでいた糸がぷつりと切れた瞬間、その関係は終わった。

それぞれの心に糸が通るくらいの細い穴を残して...。


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