二度目の初恋
ゆいぼんのお陰でアタシは前よりも泰翔と会うことも増えた。

泰翔はゆいぼんが大好きだから再会した日は抱きつきやがったけど、ゆいぼんをうざいなんて思わなかったし、泰翔も元気を取り戻したようで良かったと思った。

だけど、時々チクリと胸が痛む。

泰翔がゆいぼんと毎週土日のどちらかに会うことになっているのも知っているから、土日は朝目覚めてもベッドに横になり、夕方まで眠っている。

そうしていれば嫌なことも不愉快になることも何もかも考えないで済む。

夢の中に泰翔やゆいぼんが出てきたりすることもあるけれど、雲の上でアタシと3人で遊んでいたり、2人が宇宙旅行に行ったりするような現実味のないものばかりだから無視できる。

母が無気力なアタシを叱りに来るが、叱るというより諭すって感じだし、父は海外出張で居ないから怒鳴られる心配もない。

ってことで寝るのだ。

そうやって乗り越えられれば休みが終わってまた1週間が始まる。

週に何日かはゆいぼんと一緒に帰る。

その時はなぜかあまり泰翔がちらつくことはない。

それよりもアタシが昔のことを話して、うんうんニコニコ聞いてくれるゆいぼんの楽しそうで嬉しそうな表情を見られるのが幸せ過ぎてどうでも良くなるのだ。

ゆいぼんは本当に良い子だ。

やっぱりアタシにはゆいぼんが必要だ。

だけど...

だけど、ね。

1人になると思い出すんだ。

泰翔の笑顔。

泰翔がサッカーを楽しそうにやっている姿。

アタシと痴話喧嘩して拗ねている顔。

それ以外にもたくさんたくさん思い出はあって、全て特別で大切なもの。

その全てをアタシのものに出来たら...なんて考えちゃう。

泰翔の側に、泰翔の隣にずっといたのはアタシなのになんで泰翔はまだゆいぼんが好きなんだろうって思ってしまう。

少しだけ...少しだけだけど、憎い。

そんな感情持っちゃいけないし、持ちたくないんだけど、どうにもそれは無理みたい。

アタシが泰翔を諦められない以上、

泰翔がアタシを好きだって言ってくれない以上、

無理...なんだ。

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