二度目の初恋
泰翔が帰った後アタシはそんなことをぼーっと考えていたが、悠永のことを話すなら今だと思い直し、口を開いた。


「今話そっか...悠永のこと」


ゆいぼんは一瞬ぴくっとしたけど、覚悟を決めて大きく頷いた。

なら、アタシも覚悟を決めるよ。

アタシはすーっと息を吐いてから悠永について話した。

本当に察しが良くなったらしく、悠永が空手や柔道とか習っていたことをゆいぼんは見事に見抜いた。

だけど悠永はあの事故の後習い事は全部辞めてしまったはず。

なら一体どこで身に付けたのかあたしにはさっぱり検討もつかなかった。

そして、ゆいぼんは気づいてはいけないことのひとつをまた気づいてしまった。


「あの...前から気になってたんだけど...そのぉ...わたしの事故の後皆は......仲間割れ...しちゃった...の?」


そう聞かれた時は心臓をピストルで撃ち抜かれたみたいな衝撃を受けた。

こうなってはもう隠しきれないし、アタシも見て見ぬふりは出来ない。

ゆいぼんの真っ直ぐな瞳に見つめられ、逃げ場が無くなったアタシはアタシたち4人の真実の一部を話した。


「そう...だね。あの日以降アタシたち色々あって...時の流れと共に絆も記憶も薄れていった」

「わたしのせいだよね、きっと。わたし、もしかして誰かのこと事故に巻き込んでそれで...」

「違う!そんなんじゃない。そんなんじゃないの...。アタシが言えるのは...それだけ。ゆいぼんのせいでも誰のせいでもないってこと。だけど、あの事故を自分のせいだって悔やんでる人も、誰かのせいだって他人を責め続ける人もいる。それが現実なの...」


悔やんでるのは悠永。

それを責め続けるのは泰翔。

アタシは唇を強く噛んだ。

現実はやっぱり痛くて辛くて苦しくてしょうがなかった。

それでもゆいぼんはアタシの手のひらに自分の手のひらを重ねてくれた。

そして優しい眼差しでアタシを見つめ、アタシの心ごとその小さくて白い、あの日と変わらぬ温かな手のひらで包んでくれた。

アタシははにかんだ。

ゆいぼんと悠永を...信じる。

アタシは悠永の電話番号とメアドを書き留めておいたメモをゆいぼんに渡した。

これで2人を繋ぎたい。

やっぱりアタシは...2人に笑ってほしい。

アタシの願いを託した瞬間だった。

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