二度目の初恋
―――がしゃり。


玄関の鍵が開く音だ。

3人で玄関に向かう。

わたしは一番後ろから様子を伺った。

ぎーっとドアが嫌な音を鳴らして開く。


「お帰り、紀依」


父の優しい声。


「紀依、お疲れ様」


母もにっこり微笑む。

紀依は靴をさっと脱ぐとわたしたちの横をすり抜け、洗面所に飛び込んだ。

がらがらがらとうがいの音が聞こえてくる。


「あの、紀依ちゃん大丈夫ですか?」

「あなたは確か...」


肩くらいまで伸びたさらさらの黒髪がわたしの視界の隅に映り込む。

わたしは首を回してその声の方に顔を向けた。

ぱっと見たときにわたしは圧倒された。

わたしより5センチくらい背が高そうで、そして漂う雰囲気が冷たくて濃い灰色をしている。

濃霧をまとったような大人びていて賢そうな少女である。

この人は一体...誰なのだろう。


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