二度目の初恋
ゆいぼんと再会した時、俺は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

思わずハグしてしまうと変わらず口うるさい怜奈に叱られたが、俺は自分の気持ちを隠しきれなかった。

ゆいぼんが記憶喪失になったことは怜奈から伝え聞いていたから覚悟はしていたが、ゆいぼんは変わらず可愛くて笑うと出来るえくぼがなんだか懐かしかった。

しかし、やはり脳を損傷したせいか以前よりおとなしくおどおどしている感じを受けた。

とはいえ俺が好きだったゆいぼん...佐倉由依に変わりない。

ヤツとは再会していないみたいだし、昔の記憶もない。

ならば、それは一発大逆転のチャンスだと思った。

今なら物理的にだけでなく心理的にも俺が有利になれる。

ゆいぼんの心を掴み、ヤツに勝つためにも、俺はゆいぼんの記憶が戻らないよう、戻っても俺が好きだと言ってもらえるよう、2人だけの思い出をたくさん作ろうと考えた。

俺は毎週末ゆいぼんと2人で会い、公園やカフェで話をすることにした。

部活もあるから夕方になってしまうこともあるが、それでもゆいぼんは嫌な顔ひとつせず、俺の隣を並んで歩いてくれる。

2人だけの時間...

2人だけの世界...

それらはずっと俺が欲しかったものだった。

ゆいぼんに痛い思いをさせ、障がいが残ってしまったのは本当に苦しいし辛いことだが、記憶喪失になり、ゆいぼんも俺もまた1から思い出を作ることが出来るようになったのは俺にとって何より嬉しいことだった。

2人でこのままずっと一緒に...。

それが俺の望む幸せで永久に変わらない願いだ。

つまり...記憶を取り戻してほしくないんだ。

そしてそれは、百瀬伽耶も同じなんだ。

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