二度目の初恋
しかし、彼女の不法侵入により、私のユートピアはぶち壊された。

毎日毎日給食の時間に目の前で静かに食を楽しんでいる悠永にしつこく話しかけていたのだ。


「ねえねえ、悠永くん。休み時間にたかれなとひろくんと一緒に鬼ごっこしようと思うんだけど、一緒にやらない？」


悠永は大抵休み時間は読書か私とお絵かきをしていた。

絵を描くのが苦手だった悠永に、私はずっとイラストを彼の目の前で描いて見せることで密かに教えていたんだ。

悠永は運動は出来る方だけどやりたがらない。

3歳の時からずっとそうだったから。

悠永の気持ちを分かりきっていた私は箸を置いて振り向き、斜め前の席の彼女の肩を叩いた。


「どうしたの、伽耶ちゃん」

「悠永は外遊びがあんまり好きじゃないの。だから私とお絵かきでも...」


私が話し終わらない内に彼女はまた悠永の方に向き直った。


「悠永くんは外で遊ぶの苦手なんだね。だけどね、パパが言ってたんだ。子供は外で元気に遊ぶのがいいって。だから2人も一緒に外で遊ぼうよ」


うざい...。

私の心に靄がかかった。

悠永はなんでこんな子の隣になってしまったんだろう。

悠永が可哀想...。

私がなんとかしなきゃ。

悠永を助けなきゃ。

そう思って次になんと言って悠永を救い出そうか考えていると、悠永が牛乳を飲むのを止めて彼女を見た。


「オレは図書室で本を借りる。だから今日は...」

「じゃ、明日は？」


彼女は懲りずに説得を続ける。

どうして空気が読めないの？

どうして悠永の心が分からないの？

悠永は嫌がってるのになんで分からないの？

時計を見ると給食の時間は後5分で終了だった。

終わったらすぐに彼女に注意しないと。

そう思って残していたインゲンを無理やり口に入れ、飲み込めず牛乳で流し込もうと奮闘していると、背後から騒がしい声が聞こえてきた。


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