二度目の初恋
「悠永くんにんじん嫌いなんでしょ?いっつも残してるもんね」

「だからなに?」

「わたしがそのにんじんを食べる。その代わり一緒に遊んで」

「なんだよ、それ。それとこれは別だ」

「ううん。正当な取引だよ。にんじん残したら悠永くんは先生に叱られる。だけどわたしが食べたら叱られない。その見返りにわたしが悠永くんに何かしてもらってもいいよね?」

「別にオレは怒られたってかまわ...」


悠永の声が聞こえなくなる。

もしかして...。

私は嫌な予感がして再び振り返った。


「はいっ、食べました~」

「おいっ!何すんだよ!」


悠永が怒ってる。

普段感情を出さない、あの悠永が...

穏やかな悠永が...怒った...。

そんな...そんなはず...ない。

悠永はそんな人じゃない。

私は悠永を昔から知ってる。

悠永のことならなんでも知ってる。

こんなの...違う。

悠永らしくないよ。

いや、悠永じゃないよ。

私がインゲンと見たことない悠永の表情に頭が混乱している最中に日直が声をあげた。


「皆さん静かにしてください!...ごちそうさまでしたっ!」

『ごちそうさまでした!』


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