二度目の初恋
通信制サポート校に転校することが決まったのは今年の2月だった。

わたしは学校に通えなくなった。

勉強は追いつけていたし、無理のない範囲で体育をやったり委員会や家庭科クラブの活動にも参加したりしていた。

だけど、わたしには母に言えない秘密があった。

それは、虐められているということだった。

いじめが始まったのは去年の6月頃で、最初はペンが無くなるとかそんな程度だった。

それが上履きになり、ジャージになり、リュックになり、最後には制服になった。

それでも母に内緒にしておいてほしいと言い、担任の先生と養護教諭の方とわたしの秘密にしていた。

しかし、そうしてもいられなくなったのが真冬の出来事。

わたしが保健委員会の仕事でトイレに手洗いの液体洗剤を補充しにやって来た時、待ち伏せしていた女の子5人組に個室に連れ込まれてホースで水をかけられた。

わたしはその時に言われたんだ。


――目障りなんだよ。

――事故だかなんだか知らないけど、お前なんか死ねば良かったんだ。

――何されても平気そうな顔しやがって。

――そういうのがムカつくんだよ。


女の子たちが帰った後、わたしは冷たい便器に腰掛けて声を潜めて泣いた。

だけど次第にそうしているのも辛くなってきてわたしは大声を上げて過呼吸になりながら泣いたんだ。

涙は溢れて止まらず、とにかく心臓がえぐられるように苦しくてそのうち頭痛も吐き気もしてきた。

わたしはあの日死ぬべきだったのだろうか。

わたしは生きていてはいけないのだろうか。

平気なんかじゃない。

全然平気じゃないよ。

わたし、本当は弱い子だから、

1人じゃこんなに元気になれなかったから、

1人で困難に立ち向かうのが初めてで、

ずっとずっと辛かったんだ。

それを言うことが出来たらどんなに楽だっただろう。

泣き続けていたら急に強い眠気に襲われてわたしはそのまま眠りに着いた。

気づいた時にはふかふかのベッドの上にいて微かに隣の会議室から母の泣き声が聞こえていた。

その翌日から学校を休むようになり、単位を取れないし、環境も変えた方が良いと担任に助言されたため、転校ということになった。


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