お嬢様とピアニスト
それから何度か廊下ですれ違ったけれど、向こうは気づいていなかった。

きっともう忘れたのだろう。

相手は特別コース、縁もない。

だから諦めよう。

そう思っていた。

だけど今日、桜木はここに来た。

本当は桜木には1番聞いて欲しくなかった。

俺はあいつのことを思って弾いていたから。

もう、これで自分の思いは閉じ込めようと思っていたから。

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