きっと空は100年後


「佐脇は、一生、蝶々結びができなくてもいいよ」


「なんじゃそりゃ」


すっかり重たそうな靴を足ごと浮かし、足の首を揺らして水滴を幾分か吹き飛ばして。


「来世では完璧だかんな」


私の目に映えた歪んだ弧の中でも、崩れぬ笑顔の佐脇が、てのひらを差し出した。


「見せに来てね」


その温もりと。重ねて、混じえて、ぎゅっと。じんと。


Fin.

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