アテナ・イェーガー〜反抗、のちにキス〜
人質としての生活
「はあ……」

魔法使いのロネ・ガランテはため息をついた。その声は暗い牢屋に消えていく。

ユミル・イェーガーに捕われ、人質としてロネは監禁されている状態だ。杖も奪われてしまい、なす術がない。

「アテナは大丈夫かな……」

アテナ・イェーガーの涙を思い出し、ロネはギュッと拳を作る。アテナには閉じ込められてしまったあの日から会えていない。アテナが何をしているのか、友達のナタリー・スカイラーとネイサン・サミュエルがどうなったのか、不安しかない。

ロネは牢屋にある鉄格子のついた窓から空を見上げる。牢屋には暇つぶしになるものも、話し相手になってくれる者もいない。一日中空を眺めているしかないのだ。

「こんな風に閉じ込められるくらいだったら、魔法史の勉強してた方がずっとマシだな」

ロネはため息をまたつき、白い鳥が飛んでいる青空を見つめた。生まれて初めて鳥になりたいと思ってしまう。

その時、コツコツと足音が近づいてきた。ロネはユミルがやって来ると身構える。
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