愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
そんな可能性が胸にひとつ浮かんで、ほんの少しだけ気持ちが晴れる。
雲間から陽の光が差し込むような、そんな明るさを感じると、いっそう涙がこぼれだした。
溢れて止まらない涙に、清貴さんはそっと頭を抱き寄せてくれた。
あぁ、そっか。
ずっと、私は誰かにこうして肯定してほしかったんだ。
大丈夫。いらない子なんかじゃないよ。
選んだ道は間違いじゃないよ、って。
そう言ってほしかった。
今その言葉を与え抱きしめてくれる彼は、結婚という契約でつながっただけの人。
なのに、誰よりも近くで、理解してくれている。
その優しさがあたたかく愛おしい。
抱きしめる彼のの腕の中で目を閉じると、柔らかな香りが全て包んでくれる。
ぬくもりの中であふれる愛情。これはきっと、家族としてではないもの。
ひとりの人として、異性として、彼自身に芽生えた愛情だ。
窓の外では沈む夕陽が、湖の水面を眩しいくらいのオレンジ色に照らしていた。