愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



翌日。

清貴さんとふたり、車で一時間半ほどかけやってきたのは静岡県にある伊豆高原。

海沿いにある大きなリゾートホテルの前で車は止められた。



見上げるとそこは、ダークブラウン系のレンガの外壁に、背の高い植物や置物が並ぶバリ調のホテルだ。

建物内へ入ると、ロビーにはラタン素材を主にしたソファやテーブルが置かれ、大きな窓からは木々の茂る中庭が見える。

まさしくアジアンリゾートといった雰囲気だ。



「箱根の本店とは全く雰囲気が違いますね」

「あぁ。ここも元は別の会社が運営していてな、杉田屋同様買収してうちのグループに入ったんだ」



清貴さんはそっと顔を近付けて耳打ちする。



「ちなみに部屋はひとつしかとってないけどいいよな」

「え?……え!?同じ部屋ですか!?」

「あぁ。この前も同じ部屋で一泊したし、構わないだろ」



たしかにそうだけど……でも、この前とはまた状況も違うというか。

意識するといろいろ想像してしまい、顔がぼっと熱くなる。清貴さんはそんな私を見て笑った。



「じゃあ、俺はこれからここの支配人と話があるから。春生は自由に過ごしてくれ」

「はい。部屋に荷物置いたら館内見て回ってますね」

「あぁ。終わったら俺も部屋に行くから、そしたら夕飯にしよう」



そんな話をして、ロビーで別れようとした……その時。


  
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