愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



清貴さんと茉莉乃さんは子供の頃からの付き合い、かぁ。

……ということはもしかして、彼女が昨日周さんが話していた初恋の人?

浮かんだ可能性が胸をチクリと刺す。



茉莉乃さんが初恋の……つまり、清貴さんにとって特別な人?

なんの確証もないけれど、否定出来るものもなく、また心がざわめく。



苦しい。

他の女の子に触れさせないでとか、私だけに笑ってとか、そんな独占欲が湧いてくる。

こんなこと思うなんて、私すごく嫌な人だ……。でも思ってしまうんだ。



「春生さん」



そのとき、ふいに名前を呼ばれた。

振り向くとそこには先程の彼女……茉莉乃さんがいた。



「ま、茉莉乃さん」



つい今さっきまで彼女のことを考えていたところに現れた姿に、つい動揺してしまう。

茉莉乃さんはそれに気付いていない様子で笑顔で近付いた。



「キヨが仕事行っちゃって暇でしょ。私も、パパとキヨだけで話すからって追い出されちゃったの。だから、女の子同士お喋りしない?」



そう言って、茉莉乃さんも私の隣の椅子に腰を下ろした。



「とっても素敵なホテルですね。すごく広くてびっくりしちゃいました」

「でしょ。まぁ、それ故に維持費がかかりすぎて赤字になって、名護グループに買収って形になったんだけど」



これだけ立派なホテルなら、たしかに維持費もかかりそうだ、と納得した。



「清貴さんから、茉莉乃さんとは子供の頃からの付き合いって聞きました」

「えぇ。パパ同士が仲が良くてね、年に何回かは会ってたかな。そのたびに一日中遊んでたの」



懐かしむように言って、茉莉乃さんはふふっと笑う。

  
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