愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「沢山遊んだし、いろんな話もした。キヨは子供の頃は今より髪も目も明るい色でね、それが原因で周囲にからかわれることも多くて人に接するのが苦手だったの」
「そう、だったんですか」
そう言えば、外国の子供は大人になるにつれ髪色や目の色が暗くなっていくと聞いた。清貴さんもそうだったんだ。
大人になればなんてことないことでも、子供のうちはそういった周囲との些細な違いがからかいの対象になってしまうものだ。
さっき言っていた人見知りというのもそこから来ていたのだろう。
こうしてまたひとつ彼のことを知ることができてうれしい、はずなのに。
なにも知らない自分と、知り尽くしている彼女との差を見せつけられた気分だ。
「そんなキヨも私の前ではよく笑ってくれてたし、キヨの心に一番寄り添えていたのは私だって自信もある。
……だから、キヨと結婚するのは私だって疑わなかったんだけど」
急に真剣なトーンになる彼女の声に、ふと気付く。
「……あの、もしかして茉莉乃さんは」
『清貴さんのことが、好き?』、なんてわざわざ聞くのは不躾かもしれない。
そう思い、そこから先の言葉を濁していると
「うん。私は、キヨのことが好き」
そう、自ら言い切った。
「あなたなんかより、ずっとね」
「え……?」
「だってそうでしょ?たまたま選ばれただけでキヨと結婚出来たあなたと、私のキヨへの思い入れを一緒にしないで」
笑顔のままの彼女から発せられるのは、清貴さんへの好意と私への敵意だ。
そこまで言われてようやく、先ほど茉莉乃さんが一瞬見せた真顔の意味がわかった。