愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~



日に日に愛しさは増していき、春生と過ごす時間はあたたかく安心した。

大切に思うからこそ触れるのにも勇気が要る、けれど幼い頃の思い出を語り、俺との今を大切にしてくれている春生を見ていたら……抑えきれずにキスをしていた。



ここから少しずつ、戸籍上だけじゃない本当の意味で夫婦になれると思っていた。

……けれど。



『あなたとのつながりがほしいんです』



その言葉とは裏腹に震えるその肩を見たら、それ以上触れることなんてできなかった。



大切にしたい。

勢いとか雰囲気とかじゃなく、惹かれあうように抱き合いたい。



……20年越しの恋、だからな。



けれど、そのせいで春生を傷つけたのは明らかだ。



あの日、春生はしばらく脱衣所から出てくることはなかった。

俺がいては出ずらいだろうと思い、俺は車に戻って仮眠をとって夜を明かした。



翌朝顔を合わせた春生は泣き腫らした目をしていて、痛々しかった。

帰り道もまともに会話もできず……そのまま一日。

今朝の春生は普通を装ってはいたが、無理をして笑っているのも明らかで家の空気は重いままだった。



どうすればいいのか……。

考えても答えは出ず、また深い溜息が出る。


  
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