愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
自分でも驚くほど、素直な言葉がこぼれ出した。
けれど、ここまで誰かを愛しく思うことができる自分は、気恥ずかしくも嫌いじゃないと思えた。
けれど、話から察するにあの日の春生の焦りは茉莉乃がなにか言ったことが原因だったみたいだ。
だとしたら尚更、春生にきちんと話をしなければ。
そう決意を固めていると
「みーちゃった」
聞こえたのは、からかうような不快な声。
この声は……と怪訝な顔でドアのほうを見ると、そこには周が顔をのぞかせていた。
「……なにをだ」
「なにをって、修羅場に決まってるじゃない。よっ、さすが色男!モテるねぇ」
一部始終をのぞき見ていたのだろう、周はニヤニヤと笑ってひやかす。
「修羅場じゃない。そもそも、どうしてここに居るんだ。こっちは関係者以外立ち入り禁止だ」
「『名護に会いに来た』って言ったら、増田ちゃんが案内してくれたよ」
増田さん……余計なことを。
俺と周の付き合いの長さはここの従業員ももちろん周知していることから通したのだろう。だが今後は通すなと全員に言っておこう……。
「あの子、名護のこと好きだったんだ?罪な男だねぇ」
「からかうな」
「いや、感心してるんだよ。あんな美人に抱きつかれて告白されておきながら、春生ちゃんへの愛を語っちゃうなんてさすがだなって」
本気で言っているのか、皮肉なのか、周は笑いながら言う。