愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「そういうの、春生ちゃんにもちゃんと言ってあげればいいのに。記憶が戻るの待ってても、そのままじゃ伝わらないよ」
「うるさい。簡単に言うな」
「なにをそんなに渋ってるんだか……さっきの話から察するに、春生ちゃんとの仲、こじれちゃってるんでしょ?余裕ないじゃん」
痛いところを遠慮なく突いてくる。
周のいちいちからかってくるようなところはいつも癪に障る。けれど、こうして率直に言ってくれるところは正直嫌いじゃない。
「うかうかしてると奪われちゃうよ?例えば、親身に相談にのってくれる優しいイケメン神主とかに、ね」
そう言って周は「じゃ」と部屋を出て行く。
親身に相談にのってくれる、優しい、イケメン神主……それが周自身のことを言っていると気付くと同時に嫌な予感がする。
「待て周!お前、春生に余計なことするつもりじゃないだろうな!!」
「あははは」
「おいなんか言え!!」
これはなにかするつもりだ!
急いで周を止めなければと思うけれど、このタイミングで今度はプライベート用のスマートフォンが鳴る。
画面に表示されるのは未登録の番号。それを見て出ないわけにもいかず、足を止めて電話に出た。
くそ、タイミングが悪い。余計なことするなよ周……!