愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
11.相思相愛
よく晴れた日の午後、太陽が高く上った空を見上げる。
どんなに気分が憂鬱でも、今日も太陽は目に痛いくらい眩しく真っ白なシーツを照らしている。
「いい天気……」
朝イチで干した洗濯物がすでにからっと乾いているのを確認して、私はそれらを家のなかにしまった。
……今日も、気分は重い。
その理由は明らかで、清貴さんとのあの一件が未だ尾を引いているからだ。
清貴さんと伊豆高原へ行き、気まずい夜を過ごしたのは一昨日のこと。
一晩中泣き明かして、昨日はまともに会話もできなくて……今朝はなんとか平常心を装って接してみたけれど、清貴さんとの空気は重いままだった。
今でも頭に残る、あの日の清貴さんの声。
『……ダメだろ』
あんなふうに断られるなんて思わなかった。
情けないやら恥ずかしいやら……それ以上に、悲しい。
やっぱり私は本当の意味で妻にはなれないんだと思い知ってしまった。
「……はぁ」
溜息をつき、洗濯物をしまいおえバルコニーを出る。
そうだ、清貴さんの部屋の換気をしておこう。
ドアを開け入った部屋は、相変わらず物が少なく殺風景だ。
窓を開け外の風を入れると、ふと机の上に置かれていたストラップが目に入った。
まるで思い出を飾るように、机の隅にひっそりと置かれたストラップに胸がチクリと痛む。
茉莉乃さんとの思い出のストラップを未だに大切に持っている。それだけで彼の本心なんて察せてしまう。