愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
2.鳴かぬ蛍が身を焦がす
ピピピ……とスマートフォンのアラームが鳴り、目を覚ます。
ホーム画面に表示された時刻は朝5時を示していた。
あともう少しだけ寝ていたい、そんな気持ちを押しのけて、私は体を起こしベッドから降りた。
カーテンを開けると、目の前には夜明け直後の薄明るい空と、それを映す芦ノ湖が広がっている。
小さく窓を開けると入り込む肌寒い空気に、少しずつ目が冴えていく。
「うーん……気持ちいい朝」
その空気を吸い込んで、よし、と気合を入れた。
名護家の朝は早い。
けれど、朝からやることがあるのはいい。
爽やかなミントグリーン色の薄手のニットワンピースに袖を通して、薄めに化粧をする。
寝癖を直した髪を軽く束ねて、身支度を済ませた。
一日中ほとんど家にいるだけ、そうわかっていてもだらしない格好でいるのは抵抗があるからだ。
身なりを整え一階に降りる。
しん、と静まり返った家の中、迷わずキッチンへ向かうと私は朝食の支度を始めた。