愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
3.落花流水の情
断る権利のない、政略結婚だったはず。
いつか本当の夫婦になれたらと思っているけれど、そこに恋愛感情はない。
だけどどうしてか、清貴さんの優しい笑顔が消えない。
胸の奥、何度でも浮かんで来るんだ。
「……ふぅ」
ある日の夜。
私は清貴さんの帰りを待つリビングで、ソファに座り本を閉じた。
全文英語でつづられた小説を一冊丸々読み終えた達成感の中、その作品のキラキラとした世界観に恍惚としてしまう。
この本も面白くてあっという間に読み終わってしまった。
書斎にある本は、私も好きな恋愛小説ばかり。
全文英語ということもあって読むのに時間がかかりながらも何冊かを読んだけれど、どれも面白い。
なにより清貴さんのお母さんの本を選ぶセンスが最高……!
読むことを快諾してくれたという清貴さんのお母さんに感謝だ。
いつか清貴さんのお母さんに会ったら感想を語り合いたい……。
本をテーブルに置いたタイミングで、玄関のほうから戸が開く音が聞こえた。
あ、清貴さん帰ってきた。
今日も夕ごはんの支度はバッチリだ。待ってました、と玄関まで出迎えた。